本研究は、イグサの収穫期が7月中旬から下旬とされているが、その根拠を物質生産的立場から解明する事を目的としている。そのため、先ずイグサ個体群の個体群光合成・呼吸とイグサ個体の呼吸の温度反応を4月から8月中旬まで経路的に測定し、一日の純生産速度がどのように推移するかを計算した。また、イグサをポットで栽培し、模擬個体群を形成させて生育させ、4月から8月までの各生育期に、ポットの間隔を変えて個体群光合成・呼吸を測定し個体群物質生産速度からみた最適葉面積指数がどの程度であるのかを推論した。これらの実験から、イグサの収穫適期とされている時期の生育状態はいわゆるCeiling LAIからCeiling Yieldに近い状態であり、前者に近い状態の方が収穫適期であることを明らかにした。 以上の測定は、主に地上部の光合成および呼吸から純生産速度を計算した結果であるが、イグサの地下部も呼吸を行っていて、その呼吸による物質消費量を評価しておく必要がある。そこで、出来るだけインタクトな状態、地下部が生育している条件で呼吸量の測定を試みた。イグサはイネと同じく地下部が湛水状態でも正常に生育することに着目した。そして土耕および水耕栽培した材料を、酸素を飽和状態にした水に浸し、水中の溶存酸素量の変化から地下部の呼吸量の推定を試みた。その結果、地下部の呼吸量は地上部の呼吸量に対し、株の小さな植付け後日数が浅い頃は、地下部の重量割合と同じく30%であったが、収穫期頃には約10%程度と小さくなることが分かった。
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