研究概要 |
1.窒素施用量と硝酸態窒素(NO_3ーN)の蓄積との関係 ホウレンソウを材料に用い,窒素施用量を6段階に変え,その体内のNO_3ーN含量などを調査した。収量は,ポット当たりの窒素施用量が0.6〜1.2gで相対的に高くなり、1.5g以上では低下した。この傾向と反対に,窒素施用量が増加するとともに,体内のNO_3ーNは漸次増加した。その含量は,窒素施用量0.6g区では0.52%,1.8g区では0.80%の値を示した。また,両区の全窒素に対するNO_3ーNの割合は,前者では9.32%,後者では12.51%と,その差は約3%も増加した。この事は,施肥窒素量が増加するとともに,施肥窒素の吸収効率や吸収窒素当たりの乾物生産量を低下させ,代謝的に不活性なNO_3ーNが非同化器官である葉柄に蓄積させることになる。したがって,本実験の結果から,ホウレンソウの収量を高め,NO_3ーNの蓄積を軽減するには,体内の全窒素濃度を5.2〜6.2%に保つ様な肥培管理が望ましいと判断された。この窒素濃度では,全糖含量も高くなる。 2.ビタミンB類の散布とNO_3ーNの軽減との関係 ホウレンソウのNO_3ーNは,窒素肥料などで制御できる可能性はあるものの,その含量は一定レベル以下に軽減できない。本実験では,ビタミンB群のビタミンB_6とパントテン酸カルシュウムとを用い、ホウレンソウのNO_3ーN含量を調査した。両ビタミンの茎葉散布は,収量を約17%増加させ,窒素の利用効率も著しく高めた。とくに,パントテン酸カルシュウムは,全窒素に対するNO_3ーNの割合を最も低くめた。さらに,両ビタミンの混合物を散布したところ,NO_3ーNは対照区に比べて僅かに低くなるものの,NO_3ーNの軽減に対して相加効果を示さないと判断された。この事は,ホウレンソウの収量増大に最適な窒素濃度であっても,ビタミンB群を散布することで,収量を落すことなくNO_3ーN濃度を軽減できることを示唆している。さらに,ビタミンB_6のシュウ酸含量軽減効果も見逃すことはできない。
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