チャイブとアサツキの系統類縁関係と、特にアサツキの系統関変異を明らかにする目的で実験を行い、次の成果が得られた。 1.アサツキは新たに10系統を、チャイブは4品種を収集し、供試植物とした。2.細胞学的観察 (1)染色体数:既存の植物を含めて、アサツキの36系統は2n=16(2倍体)、11系統は2n=24(3倍体)であり、自生個体中には2n=16+1Bの個体が含まれた。(2)花粉稔性と花粉母細胞減数分裂:アサツキ2倍体中に、花粉稔性に異常を示す系統又は個体が観察された。(3)ギムザ分染法による核型分析:(1)分染性について、Kalkman(1984)がタマネギに用いた方法を検討したが、良好な分染結果は得られなかった。(2)新たに供試したアサツキとチャイブのそれぞれ核型は、これまでに明らかになった分染パタ-ンと同様であった。(3)上記のアサツキ2倍体の一部の系統又は個体で観察された花粉稔性の異常は、核型との関連が推測された。(4)アサツキ3倍体では小型のV型染色体12本が識別されたが、これらは2倍体の2種類の核型を構成する染色体に類似することが明らかになった。(5)アサツキとチャイブのF_1雑種では、識別できた8本の染色体について染色体長をみると、チャイブの染色体は総じてアサツキのそれらより短いことが観察された。また、F_1雑種の花粉母細胞減数分裂では両植物の染色体が非常に高い相同性を示したが、これは核型上には必ずしも観察されなかった。
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