Allium schoenoprasum(アサツキとチャイブを含む)の種内変異、特にアサツキの系統間変異を明らかにする目的で実験を行い、次の成果が得られた。結果は、主として細胞遺伝学的方法を用いた実験についてとりまとめたものである。1.アサツキは47系統を、チャイブは8品種を収集した。2.細胞学的観察結果(1)染色体数:アサツキは系統(個体)により2n=16(2倍体)又は2n=24(3倍体)、更に2n=16+1Bの個体が見出された。チャイブはいずれも2n=16(2倍体)であった。(2)花粉稔性と減数分裂:アサツキ2倍体中に、花粉稔性に異常を示す系統(個体)が観察された。これらの植物の減数分裂は4分子期まではほぼ正常に進行した。(3)ギムザ分染法による核型分析:アサツキの2倍体17系統、3倍体6系統及びチャイブ4品種10個体について行った。(1)アサツキ:2倍体の各系統では8本の小型V形染色体がそれぞれ識別され、それらの分染パタ-ンには明瞭に異なる2種類のタイプが観察された。形態的諸特性を調査した結果、この両タイプの核型を示した統系間には花粉稔性、分けつ性、草丈及び花器の特性に差異が認められた。3倍体では12本の小型V形染色体が識別された。(2)チャイブ:小型V形染色体の8本が識別され、アサツキに比べて核型の変異が大きかった。(3)アサツキとチャイブのF_1雑種(2n=16):識別できた8本の染色体の染色体長を見ると、総じてチャイブの染色体はアサツキに比べて短かった。またF_1雑種の減数分裂では両植物の染色体が非常に高い相同性を示したが、この相同性は核型上には必ずしも認められなかった。3.アイソザイム分析アサツキとチャイブの一部の系統(個体)について成葉のパ-オキシダ-ゼ・アイソザイム分析を行った結果、出現した3本のバンド中、2本は両植物のそれぞれに特有であり、これらの濃度と他の1本のバンドの有無又は濃度に両植物の系統(個体)で差異が観察された。
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