研究概要 |
成熟したリンゴ果実あるいは洋ナシ果実の果肉組織を20mMメルカプトエタノ-ル、10%PVPP、10mMアスコルビン酸、10mMCaCl_2を含んだ0.1Mリン酸カリ緩衝液(PH8.0)内で摩砕した後、10.000xg20分の遠心分離によってNAD-ソルビト-ル脱水素酵素(SDH)粗抽出液を得た。これをセファデックスG-25を通すことによって低分子の阻害剤を除去し、40-80%硫安塩析によって蛋白質を集めた。次にこの蛋白質をDEAE-セルロ-スカラムに吸着させ、洗浄後0.1M食塩で溶出した。さらに溶出液を脱塩後、2mMCaCl_2で平衡化したブルセファロ-スアフィニテイ-カラムに吸着させ、洗浄後10mMNADで溶出し、部分精製標品を得た。本酵素活性はCa^<2+>が存在しないと急速に失活したため、常に2-10mMのCa^<2+>存在下で処理した。部分精製した本酵素の性質を解析したところ、活性の最適PHは9.6と極めてアルカリ側に片寄っていた。ソルビト-ル基質に対する親和性(Km値)は、Ca^<2+>存在下では約50mM、存在しない場合には約200mMであった。このことは、Ca^<2+>が酵素活性の安定化だけではなく、ソルビト-ルに対する親和性をも高めることを示した。しかしながらこのCa^<2+>による効果はMg^<2+>,Mn^<2+>によっては置き換えられなかった。洋ナシ果実が収穫後追熱する過程においては多くの酵素活性が上昇し、それが品質に大きく影響することが知られているが、SDH活性は追熱において上昇せず、むしろ減少する傾向にあった。逆に、幼果においては高い活性を示した。このことは、SDHが生長中の糖の集積には重要であるが、追熱に伴う品質変化には関与していないことを示した。
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