原生地を異にするテッポウユリ、カノコユリ、トサヒメユリおよびオニユリを露地圃場で生育させた、毎月堀り上げ、20℃、12時間日長条件下でリン片挿しを行い生育反応を調査するとともに毋球の内生生長調整物質(オ-キシンおよびアブサイシン酸)の季節的消長をエンザイムイムノアッセイにより測定した. テッポウユリリン片からの仔球形成および出葉反応は既報どおり、1月を過ぎると鈍くなり、開花前〜開花直後にあたる3〜7月で最も低く以降再び高くなった.また、この反応と呼応して毋球のオ-キシン量は3〜7月に少なく、その後増加した.一方、アブサイシン酸量はオ-キシン量の変化と逆の変動を示した.オニユリおよびカノコユリでは出葉率は全般に低く、一方、トサヒメユリはテッポウユリとよく似た反応を示した.内生オ-キシン量は4種ともよく似た変動のしかたを示した.すなわち、1月から徐々に減少し、5ないし6月に最少となり、その後再び増加した.アブサイシン酸量もそのピ-クの時期は種によりややずれたが、テッポウユリのそれとよく似たパタ-ンを示した. これらのことから、オニユリおよびカノコユリはテッポウユリおよびトサヒメユリよりも深い休眠を持つこと、またオニユリとカノコユリではオニユリのほうがより深い休眠を持つことが明らかになった.これはオニユリがシベリアの沿海州まで自生域を持つこと、テッポウユリおよびトサヒメユリが九州および四国の南部以南にしか分布しないこと、またカノコユリも暖地にしか自生しないが寒冷地栽培に適していることなどの生育地とそれらがもつ休眠の深さとの強に関連性を示唆するものである。
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