緑色野菜やカボス等の鮮度保持は緑色すなわちクロロフィルの分解抑制が品質決定の重要な因子である。野菜の黄化に関してはペルオキシダ-ゼやリポキシゲナ-ゼによって生成される過酸化物がクロロフィルの分解に重要な役割を果たしていることを明らかにしたので、緑色保持が商品価値を左右する果実であるカボスの脱緑メカニズムを解明するため、以下の実験を行った。 カボス果実の緑色保持にはまずクロロフィルの分解過程を明らかにする必要があり、そのため生育及び貯蔵中のクロロフィル含量の変化とクロロフィル分解に関連する酵素の活性を測定した。カボス果実(大分県柑橘試験場産)を経時的に8月から9月にかけて採収したもの、さらに4℃と20℃に貯蔵したものについてクロロフィル代謝を研究した。まずフラベドのクロロフィル含量を分光光度計で測定するとともに、設備費で購入した高速液体クロマトグラフ(島津LC-6A)を既設のLCに連結することによってグラジエント溶出が可能になり、クロロフィル関連物質の同時分析を行うことができた。また平行してフラボノイドと総フィノ-ル及びペルオキシダ-ゼとクロロフィラ-ゼ活性の測定も行った。 果実の成熟に伴い果皮の着色(脱緑)が進みb値が増大した。またクロロフィルa、b含量は20℃貯蔵で10〜20日の間に急減した。しかしクロロフィル分解物のクロロフィリドa、b及びフェオフィチンaが検出されたが、いずれの分解物も少量であり、貯蔵に伴う増大は見られなかった。一方ペルオキシダ-ゼ活性は20℃貯蔵で急増し、20日で最大活性を示したが、4℃貯蔵では徐々に(60日まで)増加したに過ぎず、クロロフィラ-ゼ活性も両者間で大差がなかったことから、カボス果実のクロロフィル分解にはペルオキシダ-ゼが主として関与しているものと推察した。還元物質、フラボノイド等の影響については現在研究中である。
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