研究概要 |
この研究は,C_3植物に,D_4植物の葉緑体を導入することによって,光合成活性の高い植物を作るという実用的面だけでなく,遠縁の植物からの遺伝子(葉緑体)導入の可能性を明らかにするため行い,以下の結果を得た. (1)トウモロコシの葉緑体は,45%と30%のショ糖液の間に得られ,核から精製することができた. (2)トマトのプロトプラストの材料として斑入りの系統からの実生やカルスからのもの,暗黒条件下で育成したもの,あるいはパラコ-トやアトラジンのような葉緑体の合成阻害剤で処理したものも用い,単離量は,Pectolyase Yー23とCellulase "Onozuka"RS,Driselaseを混ぜて用いた時,多かった. (3)細胞融合装置を用いた時,トウモロコシの葉緑体が大きかったり,プロトプラストと葉緑体の比重の違いためか同じ層に集まらなかったりして,葉緑体の取り込み率は,高くて1%ぐらいしか達成できなかった. (4)トマトのプロトプラストの培養では,カルスまで得られたが,個体は得られなかった.ただし,技術の確認のため行ったレタスの培養では,比較的容易に再分化個体が得られた. (5)個体の馴化率は,それまでの培養条件が重要で,移植時の苗の状態に左右された. (6)ctDNAの分析で,トマトの栽培種と野生種は,区別ができた. 以上のことより,個体の育成はできなかったが,一連の各過程は,達成可能なことが明かにできた.著者自身および研究室としては,この研究を通して多くの新しい技術に挑戦し,学ぶことができた.今後,プロトプラスト培養の容易な材料に変えてこの研究は継続するつもりである.また,これらの経験,技術を他の研究にも生かしたい.
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