本年度までの研究で、マメ科植物に寄生するPhakopsora属菌には3つの既知種があり、さらに複数の末記載種が存在することを明らかにした。 ダイズさび病を起因する菌については以下のことが明らかとなった。この菌はPhakopsora Pachyrhiziであり、この種には形態、宿主範囲、および地理的分布において異なる2変種が認められる。アジア、オセアニアおよびアフリカに分布するのがPhakopsora Pachyrhizi var.Pachyrhiziで、自然条件下で16属29種の植物に感染し、胞子形成をする。この変種は自然条件下でダイズ、クズイモおよびクズ属植物を主要な宿主植物としている。さらに、この変種は人為条件下で、26属60種の植物に感染できる。いっぽう、アメリカ大陸に分布するのはPhakop-sora pachyrhizi var.meibomiaeで、この変種は自然条件下で19属42種の植物に感染し、胞子形成をする。この変種は自然条件下でクサネム、タヌキマメ、ヌスビトハギ、フジマメ、アズキおよびササゲの各属植物を主要な宿主としており、また、人為条件下では12属18種の植物にも感染できる。これら2変種は自然条件下での宿主植物として5属5種を共有するが、これらはいずれも栽培種である。これら2変種は栽培ダイズに対する病原性においても異なり、Phakopsora Pachyrhizi var.meibomiaeはPhakopsora Pachyrhizi var.pachyrhiziよりも自然条件下では病原性が低いようである。
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