Steinernema属およびHeterorhabditis属昆虫寄生性線虫の病原性決定要因を解析するため、培養実験・接種実験・微細構造学的検討を進め、以下の知見を得た。 共生細菌(Xenorhabdus)の予備添加なしに過去7年にわたって継代培養してきたSteinernema属昆虫寄生性線虫3種の病原性低下程度は、S.bibionis>S.feltiae>S.glaseriの順であった。Heterorhabditis属はSteinernema属より病原性低下がより顕著であった。しかし長期継代培養を続けた両属線虫の体内には細菌が多数保持されていたことから、保持細菌数と病原性との間に直接的な関連は認められなかった。また、病原性低下線虫のドッグフ-ド倍地およびニワトリ内臓倍地上での増殖力は依然と高く、培養条件下での増殖力と殺虫性との間に直接的関連は認められなかったが、昆虫への誘引・侵入・昆虫体内での増殖力は著しく低下した。 細菌培養用の肉エキス倍地上でSteinernema属線虫3種をMonoxenic培養したところ、線虫の発育・増殖に及ぼす共生細菌の栄養的価値は種間で著しく異なることが明らかとなった。同様の傾向は、共生細菌が存在しない無菌液体倍地を使用した実験でも認められた。 Steinernema属線虫との比較において、H.heliothidisの寄生前生存能力・感染行動・寄生後の発育を微細構造学的に検討した。その結果感染態幼虫の角皮構造は、両属線虫間で著しく異なったが、H.heliothidisの角皮基底層はSteinernemaと同様に著しく発達し、特有のNictating行動との関連を示した。各種倍地および昆虫死体中でのH.heliothidisの初期発育はSteinernemaより遅かったが、昆虫および倍地より分離した感染態幼虫体内の共生細菌数に差はなく、いずれの線虫もハチミツガに対して高い殺虫性を示した。
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