研究概要 |
本研究の最初度においては、エレクトロポ-レ-ション法を使用することによって、トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f.sp.lycopersici)の分生胞子に直接外来物質を導入できることを明らかにし、Journal Phyto pathology誌の1989年125巻に発表した。最終年後の研究においては、導入された遺伝子の発現を効果的なものとするため、本菌で有効に機能するベクタ-系の開発につとめた。遺伝子発現に至る第1段階としては、導入した遺伝子が本菌染色体DNAに組込れることが必須となる。そこで、染色体上には多数のrRNA遺伝子が存在することに着目し、これらの遺伝子をベクタ-内に連結することで、ベクタ-と染色体DNA間での相周組換えによる遺伝子導入法を検討した。まず、本菌のrRNAからcDNAを合成し、それが染色体上のrRNA遺伝子と同一であることをサザンハイブリダイゼ-ションによって明らかにした後,検出マ-カ-(ハイグロマイシン低抗性遺伝子)の上流および下流に分割した挿入したベクタ-を構築した。このベクタ-は、本菌の分生胞子にエレクトロポ-レ-ション法で効果的に導入され、検出マ-カ-遺伝子が組込れた形質転換体の作出に成功した。また、これらの遺伝子が本菌の生育・分化段階においても安定して継代されていることを証明するため、in situハイブリダイゼ-ションを行った。すなわち、それぞれの発育段階における菌糸細胞にプロ-ブDNAをマイクロインジェクション法で注入し、細胞質内におけるmRNAとのハイブリダイゼ-ションを行わせた。以上の結果は、日本農芸化学会英文誌に現在投稿中である。
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