既に得られたコウモリ超音波精査音を効率的に再現するメカニクスを検討し、吸蛾類の飛翔と吸汁活動の抑制効果を調べた。従来の磁歪型スピ-カ(A型と呼ぶ)では長時間使用で発熱駆動となり20KHz帯域以上で平坦レベルが維持出来ず、近接範囲外で利用出来ないことが判明した。次に2種の新しいセラミック圧電素子によるスピ-カを開発した。これは磁歪型で対応出来ない過度的パルス波形を連続駆動して何の問題もなく、波形の変化や時間パラメ-タの変化をディジタル処理でき、空中に強力な超音波エネルギ-を放射出来た。その1つ、特性TDK91A50Φ×2.5tのニオブ鉛圧電セラミック73板並列〔B型〕を53KHz専用駆動とし、他の1つ、ガラスエポキシ振動体2板並列〔C型〕を15〜55KHz汎用として飼育個体群ヒメエグリバとアカエグリバの固定飛翔と、吊り下げ半自由飛翔について効果を調べた。〔A型〕スピ-カでは17KHz、29msecオン、30msecオフで音源1m、2m(各音圧76dB、66dB)で放射のたびに飛翔に変化が認められたが、53KHzではレベルが維持出来ず、変化は無かった。〔B型・C型〕スピ-カでは、53KHz、17msecオン、30msecオフ、20発で音源2m(46dB)で、あるいは連続放射でも(3秒間隔)、飛翔中のはばたき回数を増加させ、吊り下げ飛翔で急進する行動を取った。両スピ-カでリンゴ吸汁活動に放射したところ、53KHz、17msecオン、30msecオフで音源2mでは対称無音区と差が無かった。10msecオン、30msecオフでも同様であったが、5msecオン、30msecオフでは吸汁活動が低下し、0.5msecオン、3msecオフでは音源1m〜3mで25頭の内吸汁活動を行う個体は1〜3頭に激減した。放射のたびに静止虫は体を萎縮させ、急に翅を動かし体を下向きに静止し、触角を後方に倒し、はばたき虫は放射の都度動きを急変するか停止した。鼓膜機能を人為的に無くした個体では飛翔や吸汁活動に変化は無かった。圧電素子を集積アレ-する方法も考察した。
|