果実吸蛾類の1次的刺孔吸汁による果実への加害について、コウモリの超音波採餌音に吸蛾類が逃避行動を起こすことを利用して、最新の電子技術を用いた超音波パルス防除法を考察した.超音波信号の発振を従来の音響的な正弦点音源駆動から、セラミック圧電素子を用いた鋸波パルス駆動の衝撃波を空中加圧放射するという新しい方法で、面音源によるエネルギ-的な駆動発振の方法を採用した。 野外でコウモリの超音波エコ-ロケ-ションを採録してその音響特性を解析し、マイクロエレクトロニクス的方法でこれを再現した。合成した信号を飛翔行動中の吸蛾に放射して、その反応の程度を再現した。合成しし、最も蛾に逃避行動を引き起こすパラメ-タを決定した. 吸蛾類が超音波パルス放射後に逃避飛翔する行動量を物理量として客観的に表わす方法として各種の検出デバイスを検討し、応力がひずみセンサとリサ-ジュ法によって飛翔の変化を数量的に、あるいは行動軌跡として図形的に把握する新しいアクトグラムを開発した. これらの方法と装置を用いてアカエグリバとヒメエグリバについて各種の合成信号による反応実験を室内条件下で行った.その結果、吸蛾が顕著に逃避行動を示す超音波は忠実なコウモリの採餌音のパラメ-タでなく、また周波数や振幅を変調させる必要もなく、CF音の20〜30kHzを7秒間隔で0.5秒のパルス長で約50〜60dBの音圧レベルで連続放射すれば十分であることが判明した。加圧放射はパルス駆動の特別仕様の増幅器とスピ-カを使用する必要がある。
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