近年、生物学分野で各種の計測機器とパソコンを連結したシステムが開発、利用されるようになったが、測定対象形質のうち、重量については著者はすでにシステムを完成しており、短時間に大量のデ-タを処理することに成功している。しかし、形態に関する測定は一般に煩雑で、三次元解析となると機器構成も大規模かつ高価であり、しかもまだ有効なシステムは開発されていない。そこで著者は高解像度のカメラとパソコンを用いて、画像解析を試み、自作のソフトによる低価格で効率の良いシステムの開発に成功した。 測定の対象は、カイコの卵や繭など形状の安定している形質とし、低価格で設定した機器構成によるそれらの二次元の画像解析を行って、長径・短径・断面積などを測定した。さらに断面積デ-タから回転体の体積を求める方法で、体積の推定値を算出し、その実測値と比較したところ、よく一致することが分かった。 このようにして得られたデ-タを用いてカイコの系統、雌雄、倍数性などの検討を行い、これらの測定変数を組み合わせて多変量解析を試みた。その結果、系統間の差から、世界各地に適応放散したカイコの品種分化に関する遺伝学的類縁関係についての知見が得られ、また雌雄間の差から、有効な雌雄鑑別法の開発を可能とすることができた。とくに繭の形に関する多変量解析から雌雄を分けるのは、従来の繭の重量のみによる雌雄鑑別法をより効果的に補完するものであり、実用上からみても、一代雑種製造のための雌雄分離の機械化を可能とするという観点から、将来の品種改良や労力軽減に役立つことが期待できる。
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