本年度は大規模養蚕複合経営の存在形態を広く分析整理するため、大規模複合に関する文献・統計資料の収集および整理を行い、次いで地域別・類型別に東日本地域から二県、西日本から一県を選択し、経営実態調査を実施した。以下の中間的結果を得た。 1.前者については、大規模養蚕と称される経営のうち、昭和63年度における収繭量3トン以上農家127戸の経営方式は養蚕のみは僅かであり、大半は他部門、なかでも水稲部門との結合が高い割合を示し、ついで野菜、畜産との結合であった。要するに養蚕の大規模化といえども、他部門との結合が一般的とみなしうる。 2.後者の実態調査については、調査地域の中核的養蚕農家を主な対象として、当該地域における経営方式の特徴を考察した。(1)東日本地域の群馬県前橋市芳賀地区では、養蚕・畜産、養蚕・野菜、養蚕・水稲など、相対的に多様な部門結合の展開がみられている。(2)千葉県八街町では都市近郊畑作地帯の立地から、養蚕・野菜、養蚕・野菜・落花生等の畑作養蚕経営の展開であった。特に本町の場合は昭和48年からの養蚕開始であり、当該部門の導入にともなって、従来の夏野菜中心から秋冬野菜への移行、また養蚕との労働競合の少ない夏野菜品目の作付など、養蚕と野菜部門との間にはかなりの調製が実施されてきた点が特徴である。(3)なお西日本地域からは熊本県を予定したが、当該地域のなかでも地位上昇を示す鹿児島県に注目し、かつ中核的養蚕地域をなす姶良地域を対象とした。ここでは、遠隔地としての立地、ついでシラス土壌に代表される劣等地的立地条件を背景として、養蚕・生産牛、養蚕・菌(しいたけ)の部門結合が高い構成比率を有していた。次年度は大規模養蚕の経営方式を地域別・類型別に設計し、一般化に努めたい。
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