研究概要 |
組織培養法を活用する新しい桑育種に関する昨年度の成果を補遺することに併せ,これを基に研究を発展させる実験を試みた。まず、試料用カルスの冷蔵保存法について昨年度と異る品種で検討した。その結果,本年度供試桑の剣持とロソウのカルスについても20週間は可能であることを確認した。また、カルスの出庫後の増殖に関し,品種によって発現や覚醒に多少のズレはあるが休眠類似現象がみられた。そして,電気泳動法によるカルスの酵素や蛋白質のバンドの消長に関しても昨年同様に休眠類似現象と一脈相通ずる点が窺えた。ところで,昨年度の一ノ瀬や本年度供試の剣持やロソウ等はいずれも休眠する桑であるが,休眠し難い沖縄桑やインドネシア産桑について上記と同様の実験を行ったところ,休眠類似現象は認められず,そして,酵素や蛋白質のバンドの消長にも冷蔵による変化はみられなかった。次に長期間の保存の為の冷凍保存法について検討を行った。即ち,凍害防禦剤の種類と処方,冷却温度,出庫解凍と洗滌方法および増殖の促進等について検討を行い,従来の液体窒素による方法に較べ安価で簡便な電気冷凍庫による保存法を開発した。また、生長調節物質を使って細胞を懸濁単離させる方法も検討した。上記のような過程を経た種々の細胞のプロトプラストで電気融合を試みたところ,桑の品種間における融合の難易が認められた。異種植物との融合を試みたが,概ね可能ではあるが,中には電圧を高くすると破壊するものもあった。得られた融合細胞の培養条件,即ち,培地についての細胞密度,pH,無機塩濃度,窒素源の形態と量比,炭素源の種類と濃度,オ-キシンとサイトカイニンの効果,リン酸濃度および天然物質や中古培地添加の効果等に検討を加えて改良を行い,不定胚から不定根の誘導および生育にまで成功した。そして,現在,植物体再生への育成進行中である。
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