この研究は、オオムギ、コムギ、エンバクの間に認められる顕著なアルミニウム抵抗性の実体と発現機構の解明を目的としている。本年度の研究においては、微量のアルミニウムの測定方法にさらに検討を加えながら、前年度に引き続いて、培養液に0、1、4、および12ppmのアルミニウムを添加した幼植物個体について、根の発達様式の差異と部位別のアルミニウム濃度の測定を中心に行なった。 発芽後2週目までの個体では、オオムギでは根の発達が遅く、種子根と冠根のその太さも外観も同じで、肉眼での区別は困難であった。コムギでは根子根の発達が顕著で、一方、エンバクでは種子根の褐変が早く、茎の基部から太い冠根の発生が数多く認められた。3週以降になると、三種類とも種子根と冠根、およびその分岐の判別が容易になった。そこで発芽後2週目の個体を1週間アルミニウム添加処理したものについて、地上部、種子根と冠根の主根、分岐根の重量と部位別アルミニウム濃度の測定を行なった。根の重量と外観に最も顕著な差異が認められ、オオムギではアルミニウム処理によって主根と分岐根の伸長がとまり、その部位がコブ状に肥大し褐色になっていた。一方、エンバクの根では、種子根が既に処理前から生育が止まり褐変していたが、アルミニウム処理区においても冠根からの分岐根と新しい冠根の発生と伸長がみられた。根のアルミニウム濃度の比較では、3週以降の個体では、新しい根の濃度は、古い根よりもいづれの種でも有意に低かった。また、根端、準根端、中央部、基部の部位別のアルミニウム濃度の比較では、エンバクの分岐根と新しい冠根の先端部の濃度が、オオムギ、コムギのものよりも明かに低く保たれていた。このような、エンバクの根の発達様式と根端の低いアルミニウム濃度がより大きいアルミニウム抵抗性の発現を支えているものと理解された。
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