この研究は、オオムギ、コムギ、エンバクの間に認められる顕著なアルミニウム抵抗性の実体と発現機構の解明を目的とし、平成2年度と3年度の2年間継続した。 初年度においては、根の発達様式の定量的な計測方法と、微小部位の微量のアルミニウムの測定方法の確立を中心に検討した。その結果、種子根と冠根に分けさらに分岐根の発生量を追跡する方法が実用可能となった。また、ムギ類の幼植物の根を根端から0ー5mm、5ー10mmに切断した微小試料を分解しフレ-ムレス原子吸光法によりアルミニウムの測定可能が確かめられた。 本年度の研究においては、培養液に0、1、4、および12ppmのアルミニウムを添加した幼植物個体について、根の発達様式の差異と部位別のアルミニウム濃度の測定を中心に行なった。発芽後3週以降の個体では、三種類のムギとも種子根と冠根、およびその分岐の判別が容易になった。そこで発芽後2週目の個体を1週間アルミニウム添加処理したものについて、地上部、種子根と冠根の主根、分岐根の重量と部位別アルミニウム濃度の測定を行なった。根の重量と外観に最も顕著な差異が認められ、オオムギではアルミニウム処理によって主根と分岐根の伸長がとまり、一方、エンバクの根では、種子根が既に処理前から生育が止まり褐変していたが、アルミニウム処理区においても冠根からの分岐根と新しい冠根の発生と伸長がみられた。新しい根のアルミニウム濃度は、古い根よりもいづれの種でも有意に低かった。また、根端、準根端、中央部、基部の部位別のアルミニウム濃度の比較では、エンバクの分岐根と新しい冠根の先端部の濃度が、オオムギ、コムギのものよりも明かに低く保たれていた。
|