研究概要 |
大麦根の鉄-ムギネ酸錯体(MAs-Fe錯体)の吸収リセプタ-遺伝子を釣り上げるために,リセプタ-の活性を調べるアツセイ系の確立について検討した。水性二層分配法によって鉄欠乏大麦根の細胞画分を単離した。この画分はリンタングステン酸-Cr混液によって電子顕微鏡的に均質な細胞膜であることが観察された。この細胞膜小胞体に対して^<55>Fe-MAsの取り込み活性を各種pH領域において検討したが,^<55>Feの比放射能が低いこと,また^<55>Feの小胞への吸着能が高いこと(恐らくはリン脂質と結合している)などから,小胞体への積極的なとりこみを有意に観察することができなかった。今後は(1)新鮮な小胞,(2)できるだけ大きな小胞を形成させる技術の開発,(3)3H-ムギネ酸のような比放射能の高い化合物のin vitro合成系による合成,などの技術の向上により,このアツセイ系を精度の高いものとして開発確立することが可能であろう。 また,上記細胞膜画分を一次元電気泳動すると,鉄欠乏植物根由来と対照区由来の細胞膜の間に,14,28,40kDaのペプチドのバンドに差が認められた。これらのペプチドをさらに二次元泳動上で分離して,このペプチドをpVDF膜にブロッティングしたペプチドのN端の構造から,MAs-Fe錯体のリセプタ-遺伝子にせまれるものと期待している。
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