研究概要 |
昨年度、テッポウユリの花粉は人工合成培地の上で発芽する際にはカルシウムとホウ素、および浸透圧調節剤であるショ糖が必要であることを明らかにした。本年度はX線微量顕微分析法を試みたが、花粉管などの十分な試料の作成ができず、カルシウムとホウ素の花粉内での分布、および微量定量は今後引き続き行うこととした。カルシウムが花粉発芽に必須であることより、カルシウム代謝に関連する化合物の中で、EDTAは蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシイミド(CHI)の花粉発芽阻害を回復させる効果があることを見いだした。これらの結果は、カルシウムとEDTAが細胞壁あるいは細胞膜に何らかの作用を示し、花粉の発芽を促進することを示唆している。 ホスファチジルイノシト-ル(PI)の脂肪酸組成は発芽にともなって幾分変化した。主要な構成脂肪酸はホスファチジルコリン(PC)などと同じく16:0、18:2、18:3であったが、発芽にともなって18:2,18:3が減少した。この変化はPCとは異なっていた。発芽花粉からPIの単離とその分子種の解析は現在行っている。 βー1,3ーグルカンは花粉の発芽にともなって花粉管の細胞壁の主成分であるが、その分解酵素であるβー1、3ーグルカナ-ゼについて検討した。花粉には本酵素活性が十分存在したが、酵素活性で追跡する限り成熟花粉と発芽花粉、あるいはカルシウムの有無で活性にほとんど差は認められなかった。そこで抗体を用いて本酵素の酵素量、局在性を検討するためエンドウのβー1,3ーグルカナ-ゼの抗体を用いて検討したが、ユリの酵素とは反応しなかった。そこでユリの本酵素を得るため、ユリの葉から本酵素の精製を試みたところ、電気泳動的に単一な標品を得ることができた。分子量は29000のモノマ-であった。現在本酵素を大量に精製し、抗体作成の準備を進めている。
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