初年度のスメクタイト質土壌粘土に対する凝集試験で、黒ボク土B層から分離したイモゴライト・アロフェン粘土と合成したイモゴライト・アロフェンでは、後者の凝集効果が勝っていた。次年度では Si/Alモル比〓0.5の非晶質アルミノケイ酸ポリマ-(HASP)、アロフェン、イモゴライトを合成し、初年度の測定に基づいて組立てた凝集試験法によって、これらがスメクタイト質及びカオリン質土壌粘土に対して示す于凝効果を、ヒドロキシアルミニウムポリマ-(HAP)、AlCl_3、CaSO_4と比較して評価した。Alを含む凝集剤を20μmol Al、CaSO_4を220μmol/100mg粘土の割合で添加し、反応後水洗を繰り返し、粘土の沈定容積と分散開始時の平衡溶液の電気伝導度を基準にCa及びAllモル当たりの凝集効果を判定した。凝集効果は両粘土とも、CaSo_4<AlCl_3<HASP、HAP<イモゴライトの順に高くなり、アロフェンは凝集効果を示さなかった。また、未処理粘土とHAP及びイモゴライトの凝集効果検出後の粘土の交換性陽イオン(Ca、Mg、K、Na)総含量の差から、粘土の陽イオン交換基の一部、スメクタイト質粘土では約20及び10%、カオリン質粘土では約50%及び30%が、それぞれHAP及びイモゴライトの正荷電部位と静電気的に結合していることを推定した。なお、凝集効果に著しい違いがあったイモゴライトとアロフェンの間には、粘土の陽イオン交換基との結合に関しては違いがないことが推定された。 これらの結果を総合して1)ポリマ-陽イオン、HAP、HASP、イモゴライトは、モノマ-陽イオン、Al^3^+、Ca^2^+とは異なり、低い濃度の電解質溶液中(NaCl換算で<10^-^3M)で凝集効果を示す、2)凝集効果の発現には、ポリマ-陽イオンの正電荷とともにその大きさと形状が重要な役割を果たす、3)凝集効果の発現に必要なポリマ-陽イオン添加量は、重量で粘土の約1〜2%程度であり、重粘土壌の物理性改良に利用できることを結論した。
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