研究目的の“土壌ー植物におけるセレンの存在形態とその挙動"を検討するため、土壌全セレンと可溶性セレンの定量方法を開発したのち耕地土壌における全セレンの分布と可溶性セレンの存在形態を検討した。 1.蛍光検出ー高速液体クロマトグラフィ-法による土壌全セレンの高感度定量法を開発した。この方法を京都府亀岡盆地の耕地土壌に応用し、土壌全セレン濃度の平均値として作土層0.29ppm(N=51)、下層土0.32ppm(N=21)を得た。一方、土壌セレンを粒径別に分析し、土壌セレンは難溶性の成分中には少なく、比較的可溶性の形態で存在することが認められた。さらに土壌セレンは希アルカリ溶液によって大部分が溶出し、アルカリ溶液中のセレンの大半が腐植酸とフルボ酸中に有機態の形態で存在することが認められた。 2.植物の可給態セレンを表すと考えられる土壌の水または熱水可溶性セレンの検討を行なうため、可溶性セレンの簡便な全量定量法を確立した。さらに可溶性セレンを無機態セレン(Se^<4+>、Se^<6+>)と有機態セレンに選択的に分別定量する方法を開発した。検討の結果、土壌の可溶性セレンは全セレンの約5〜10%を占め、全セレン濃度との間に有意の正相関が認められた。さらに可溶性セレンの存在形態を分別定量法とゲルクロマトグラフィ-を用いて検討し、土壌の可溶性セレンの約70%が低分子あるいは高分子の有機態の形態で存在することが認められた。有機態の形態の詳細は不明であるがゲルクロマトグラフィ-で分離したセレンとアミノ酸成分の分布が一致することからセレンをふくむアミノ酸の状態で存在しているものと推定される。一方、無機態ではSe^<4+>が多く、かつ土壌pHが高いほどSe^<4+>濃度の高い傾向が認められた。しかしSe^<6+>は少なく、またSe^<6+>濃度と土壌pHの間に関連性は認められなかった。
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