研究概要 |
ダニ喘息は、I型アレルギ-疾患であり、抜本的な治療法としては、減感作療法が唯一のものと考えられ、これには、安全で確実にワクチンとして奏功する充分量の治療用ダニ抗原の供給が不可欠である。しかし、ダニ飼育物中に微量に存在する多種類の抗原から、個々の患者で異なる発症感作抗原を高純度に、しかも多量に調整することは困難と考えられる。そこで、ワクチンとして有効に機能する減感作治療用のダニ抗原の安定な大量生産を実現するために、ダニ虫体中の主要アレルゲン蛋白質をコ-ドする遺伝子をクロ-ニングした。 ダニ虫体からRNAを抽出後、Oligo(dT)-celluloseでpoly(A)-mRNAを分画し、そのcDNAを調整した。それにEcoR1 リンカ-をつけてλgtllに組り込み約60万pfuの組換えファ-ジを得た。これらを大腸菌に感染後、IPTG浸漬ニトロセルロ-スにブロッティングして、ウサギ抗ダニ虫体血清で免疫スクリ-ニングし、これに強く反応するプラ-クを、二次免疫スクリ-ニングしてダニ抗原・β-ガラクトシダ-ゼ融合蛋白を発現するファ-ジ59クロ-ンを得た。このうちの9クロ-ンを、IPTG存在下で大腸菌に感染させ、その培養上清をウサギ抗ダニ虫体血清を用いたELISA法で、また、SDS-PAGE法で調べた結果、いずれもβ-ガラクトシダ-ゼ融合蛋白として発現していることを確認した。また、固定化ウサギ抗ダニ虫体抗カラムで融合蛋白を精製したところ、ダニ喘息患者の特異lgGとも強く反応した。このうちのミニライゼ-ト法により1150bpと推定される挿入cDNAには、2ヵ所Acc l,Cla l,及び1ヵ所のBamH l,EcoR 1,EcoR V制限酵素切断部位があった。このcDNAをpUC18に組み直し、ジデオキシ法により全塩基配列を解析中である。更に、これを室岡の開発した異種遺伝子高発現ベクタ-につなぐことによって、ダニ抗原の安定な大量生産も可能な見通しとなってきた。
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