研究概要 |
我々は、生体中に広く分布するメチル化修飾タンパク質の代謝回転に伴って遊離するN^G,N^G-ジメチルアルギニン(DMA)が、新規な酵素-ジメチルアルギニン・ジメチルアミノヒドロラ-ゼ-の加水分解作用によってシトルリンとジメチルアミンに代謝されることをラットを用いて立証した。この反応によって生成するジメチルアミンは、従来、その生体内における生成起源の不明な代謝物として、また、発癌性を有するNーニトロソジメチルアミンの前駆体として注目されてきた化合物である。上記酵素の発見はジメチルアミンの生成にDMAが前駆体として関与することを示唆した。本研究の目的は、生体内におけるDMAからのジメチルアミンの脱離並びにその代謝的挙動を明らかにすることにある。 今年度においては、Wistar系雄ラットに[CH_3-^<14>C]DMAを腹腔内投与し、呼気、尿、臓器中の放射活性の分布を測定すると共に、生成した放射性代謝物をイオン交換クロマトグラフィ-により分画することによって、各臓器におけるジメチルアミンの生成を確認すると共に、他の代謝産物の挙動について検討した。 投与したDMAの放射能は、2日以内にその殆どが尿中に排泄され、呼気中のCO_2への取り込みは認められなかった。尿中放射性代謝物のうち約70%がジメチルアミンであった。投与後30分の放射能は、主として腎臓及び肝臓に認められ、その放射能の約30%はジメチルアミンに存在した。一方、^<14>C-ジメチルアミンを直接投与したラットにおいては、その放射能の殆どが2日以内に未代謝のジメチルアミンとして排泄され、一部は尿素に転換することを示した。以上、今年度の研究によって、DMAはラットにおける生体内ジメチルアミンの前駆体であること、又、種々の臓器において生成したジメチルアミンの殆どは速やかに尿中に排泄されることを明らかにした。
|