研究概要 |
メチル化修飾タンパク質の代謝回転に伴って体液中に遊離するN^G,N^Gージメチルアルギニン(DMA)は、ラット体内において速やかにシトルリンとジメチルアミン分解されることを明らかにすると共に、この代謝に関与する新規な酵素ージメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラ-ゼーにつき単離・精製を行って、その性質を明らかにしてきた。本年度においては、精製酵素に対するモノクロナ-ル抗体を作成し、実際に生体内における酵素タンパク質の存在をイムノブロット法によって確認すると共に、生体内でDMAからのジメチルアミンの遊離に本酵素が関与することを立証した。さらに遊離したジメチルアミンの代謝的挙動について検討を加えた。 DMA代謝酵素は、ラットの腎臓、肝臓、脳において比較的強い活性を示し、小腸、動脈その他の臓器においても弱いながら活性が認められた。また、本酵素に特異的なモノクロナ-ル抗体を用いて酵素タンパク質の存在を識別し、その分布がかなり広い臓器におよぶことを明らかにした。一方、放射性DMAを用いた実験で、ジメチルアミンがDMAより生体の各種臓器において遊離し、その遊離したジメチルアミンの約90%は24時間以内に尿中にそのまま変化を受けずに排泄される事を認めた。僅かながら、尿素及び中性あるいは酸性の未知代謝物に転換されることが示されたが、このものが、ニトロソジメチルアミンであるか否かは検討中である。 本研究の成果は、ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラ-ゼが、血管内皮細胞由来の弛緩因子(EDRF:NO)のブロッッカ-として知られるモノメチルアルギニンをもつ基質とすること、また、亜硝酸イオンは生体内の特殊な細胞において常に生成することが明らかにされてきており、免疫学的に活性化された異常な生体環境においてのジメチルアミンの遊離とニトロソ化の関係やEDRFのブロッカ-の代謝との関連は今後の興味ある研究課題である。
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