研究概要 |
蛋白質の翻訳後の修飾としてのチロシン-O-硫酸化はゴルジ体(trans)で起き、分泌のためのシグナルか、または代謝制御の役割を持っていると考えられている。蛋白質を特異的に硫酸化するTyrosylprotein sulfotransferaseの精製は本修飾の機能解明に不可欠で、今回、膜結合および非結合sulfotransferaseの基質特異性及び諸性質を検討した。また、生体内にチロシン硫酸化蛋白質に特異的に作用する脱硫酸化酵素sulfataseはいまだ確認されていない。そこで今回ヒトの胎盤と白血球、および牛の肝臓の細胞分画画分を用いてsulfatase活性の測定を行った。 膜結合sulfotransferase(I)は牛肝臓のゴルジ体を豊富に含むミクロゾ-ム画分のコ-ル酸ナトリウム可溶性画分から、また非膜結合sulfotransferase(II)は細胞質可溶性画分から調整した。基質としては、チロシン、N-アセチルチロシン、チロシンアミド、チラミンそしてp-ニトロフェノ-ル(PNP)を用いた。〔^<35>S〕-PAPSまたはPAPSと酵素および基質を反応させ、セルロ-スTLCで分離し、オ-トラジオグラフィ-またはHPLCで硫酸化物を検出した。また、sulfatase活性は細胞質可溶性画分とミクロゾ-ムTriton X-100可溶性画分を検討した。チロシン硫酸化ペプチドとしてcholecystokinin octa-peptide,fibrinopeptide,Leuenkephalinを用い、活性判定はHPLC法を用いて行った。 その結果、(I)はPNPだけを効率よく硫酸化したが、他のチロシン誘導体には反応しなかった。また(II)はチロシンアミド、チラミンおよびPNPを強く硫酸化し、他のチロシン誘導体には反応しなかった。このように、(I)及び(II)間には明確な基質特異性差異が示された。しかし、哺乳動物のミクロゾ-ム画分のsulfatase Cはフェノ-ル性硫酸化基質には強い分解活性を示したが、チロシン硫酸化蛋白質に対しては全く分解活性を示さなかった。
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