Bacillus thuringiensis(Bt)は昆虫に特異的に作用する分子量130kDaの殺虫性蛋白質(ICP)を生産する。Btは多くの亜種を有し、殺虫スペクトラムも異なっている。その一種であるB.thuringiensis var israelnsis(Bti)は双翅目昆虫に対して特異的に殺虫性を有すると共に、(1)昆虫神経毒活性、(2)昆虫細胞毒活性、(3)哺乳動物細胞毒活性、(4)哺乳動物溶血活性、(5)乳飲みマウス殺傷活性を有している。そこで、このICP分子のどの部位にどの生物活性を有するかを明らかにするためICP遺伝子のサブクロ-ニングや遺伝子改変の手法を用いて、ICP分子中の活性部位を明らかにしようとした。 まず、ICPのN末端及びC末端からの欠失変異遺伝子を作成しそれらの遺伝子産物を昆虫培養細胞TN-368におよぼす作用と殺虫活性(ボウフラ)を調べ、次で、ヒツジ赤血球細胞やネズミ培養細胞NIH-3T3への作用も簡単にテストした。C末端側を欠失させるとウサギで作成した抗Bti・ICP抗体と反応しなくなるのでE.coli中での発現を検出するためlacZ′を有するプラスミドとしてβ-ガラクトシダ-ゼ活性にて検出を行なった。 Bti・ICP遺伝子ISRH3のN末端側欠失遺伝子の560番まで欠失しても殺虫活性は認められた。一方で、ISRH4を用いてC末端の欠失遺伝子産物について吉田らにより30〜695番アミノ酸部分に殺ボウフラ活性が存在することが示された。そこでISRH3において560〜635番のアミノ酸部分を含む欠失遺伝子を作成して活性を測定した。このものは殺ボウフラ活性も昆虫細胞、哺乳動物細胞毒性等が失われていた。又、ISRH3において溶血活性は認められなかった。さらに、3T3細胞毒性はわずかに認められるものの溶血活性、哺乳動物細胞毒活性は認められなかった。この溶血、哺乳動物細胞毒活性はBtiの結晶蛋白に含まれる別の蛋白によると推定された。殺虫活性、昆虫細胞毒性はISRH3の中心部と推定した。
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