研究概要 |
岩手県旧松尾硫黄・硫化鉄鉱山から流出する強酸性鉱山廃水(pH2ー3)を対象として、何種類かの有機物(グルコ-ス、ペプトン、クエン酸など)を添加した培地を用いて、最終的に66菌株の好酸性従属栄養細菌が得られた。それらの分離菌株の形態的特徴、栄養要求性(炭素源、窒素源など)、生理学的性質についてはすでに報告した。ここでは、(1)有機物の利用性、(2)抗生物質感受性、(3)化学分類学的諸性質について検討した。 1.全ての菌株は、種々の炭素化合物(グルコ-ス、クエン酸、リンゴ酸、グルタミン酸)を利用する。また、窒素源としては尿素も利用する。それらの生育は酢酸により阻害される。グルコ-ス(0.5ー15%)・酵母エキス(0.1ー0.5%)・トリプチケ-スソイ(0.1ー5%)の利用性は、菌株により異なった。 2.多種類の抗性物質感受性をDisk法で検討した。全ての菌株は、Cefatrizine,Tetracycline,Doxycycline,Ampicillinに感受性を示し、Josamaycin,Tobramycin,Lincomycinには非感受性を示した。Streptomycin,Cloxacillin,Cephaloridine,Chloramphenicolに対する感受性は菌株により異なった。 3.化学分類学的諸性質として菌体脂肪酸組成、DNA GC含有量、ユビキノン組成の分析を計画していたが、HPLCが購入・利用できなかったために、菌体脂肪酸組成のみを分析した。全菌株の凍結乾燥菌体から塩酸ーメタノ-ル法で脂肪酸を抽出し、GLCで分析してその組成を求めた。直鎖脂肪酸としてはC16:0、C18:0、C18:1、19cycが、またヒドロキシ酸としては3OH14:0が全菌株に共通して認められた。分析デ-タをクラスタ-分析し、分離菌株は脂肪酸組成から2グル-プに分けられる事が認められた。
|