本研究代表者はペプチドグリカンに共有結合したポリアミンの生理作用について研究を行ない、本年度内に次のことを明らかにした。 1.グラム陰性偏性嫌気性菌Megasphaera elsdenii及びAnaerovibrio lypolyticaにおいてもペプチドグリカン結合型ポリアミンが存在していることが明らかになった。M.elsdenii においては、Selenomonas ruminantium と 同様にカダベリン、プトレシンかペプチドグリカンの構成成分であるが、A.lypolyticaにおいてはカダベリン、ペトレシンの他にトリアミンであるスペルミジンが存在していることが明らかになった。スペルミジンが生体構築物に共有結合している事実は初めてである。現在ポリアミンの中で最も重要であると考えられているスペルミジンが細菌の表層膜に発見されたことによって、さらにこの菌を利用した分子モデルはポリアミンの生体内における役割を解明する上で役立つと考えられる。 2.リピド中間体:ジアミン転移酵素の精製:本酵素は上記菌の細胞質膜に左右する酵素であるが、本酵素の性質及び本酵素に関する遺伝子のクロ-ニングを進めるにあたり、本酵素の分離精製を試みた。まず本酵素の細胞質膜からの遊離と可溶化を試みた。その結果、S.ruminantion から調製した膜をp-octylglycosrideで処理した後、再度、0.6M NaCl存在下で2%p-octylglycoside処理により、膜から遊離し可溶化することを見い出した。このことより、本酵素の分離精製が可能になった。今後、本酵素を表面活性剤存在下で精製を行ない、諸性質を検討すると共に、構成アミノ酸配列を決定し、これから人工DNAを合成して、これをプロ-ブとして、本酵素の遺伝子をクロ-ニングする予定である。
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