酵母S.cerevisiaeのUSO1は酵母の蛋白分泌において小胞体ーゴルジ体間の輸送に関与する遺伝子で、温度感受性変異uso1を相補する活性のある遺伝子をクロ-ン化し塩基配列を既に決定したが、この遺伝子がサプレッサ-ではなく真の野生型USO1遺伝子であることを遺伝解析により確認し、遺伝子破壊実験より酵母の生育に必須であること、パルスフィ-ルド電気泳動よりUSO1遺伝子は酵母の第IV染色体に存在することを明らかにした。USO1遺伝子は1790アミノ酸よりなる親水性の蛋白質をコ-ドしているが、そのC末端側の約半分はcoiled coilとなるαヘリックスを形成し、それによりUso1遺伝子産物は二量体として存在すると予想された。本遺伝子産物の局在性や相互作用する細胞成分を明らかにするには抗Uso1蛋白抗体を用いた生化学的解析が有効であると考えられたので、USO1遺伝子のN末端部分或いはC末端部分とグルタチオントランスフェラ-ゼ或いはT7ファ-ジ第10遺伝子を各々連結した融合遺伝子産物を大腸菌で大量発現することを試みた。種々の条件検討の結果、N末端側アミノ酸36ー571及びC末端側アミノ酸1128ー1790を含む融合蛋白を生産させることに成功し、これらをSDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動で精製して、マウス及びウサギを免疫し抗血清を得た。N末端側Usol蛋白に対する抗血清の力価は、ウエスタンブロット法でマウスでは約100倍、ウサギでは1000倍以上希釈しても融合蛋白と反応し特異性も充分であった。酵母抽出液を分画してウエスタンブロットを行ったところ、野生株やマルチコピ-でUSO1遺伝子を持つ株では特異的なバンドは検出できなかったが、GAL7プロモ-タ-によりUSO1遺伝子を高発現させた株では分子量約200KのUsol蛋白質が検出された。USO1遺伝子の転写産物もGAL7により発現した場合のみ際立って多量のmRNAが検出されたので、Usol蛋白質は本来細胞内には極く微量した存在していないと考えられる。
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