1.PVYのゲノムRNAより作製したcDNAのクロ-ン化 PVYには、普通系統(PVY-O)と黄斑えそ系統(PVYーT)の2系統が存在し、この両系統の間では干渉作用が認められないので、両ウイルスのゲノムの塩基配列にはある程度の差異があることが予想された。そこで、この両系統のウイルスをタバコ(Nicotiana tabacum cv.Samsun NN)で増殖させ、純化精製した後ゲノムRNAを抽出した。その鎖長は両ゲノムとも電気泳動上約10kbであった。このRNAよりoligo(dT)をプライマ-としてcDNAを合成しクロ-ン化したところ、PVY-Oでは4.7kbの、PVY-Tでは1.3kbの最大鎖長のcDNAを得た。これらの全塩基配列を決定したところ、その末端にはpoly(A)鎖が存在したのでゲノムRNAの3'側に相当するものであると判明した。両者の塩基配列の相同性は88%であった。また両塩基配列とも予想されるopen reading frameとしては1個の連続したものしか見いだされず、ウイルス構成タンパク質がpolyproteinとして生成されることが示唆された。両ウイルスの外被タンパク質は共に267アミノ酸であると推定されたが、両者間の相同性は92%にとどまった。また、非相同アミノ酸の50%はN末端から45アミノ酸の範囲内に局在していた。 2.タバコの組織からの植物体再生条件の検討 PVY抵抗性植物の遺伝子組換え技法を用いた育種のためには、組織から植物体を再生させる必要がある。そこでタバコ(N.tabacum cv.Petit Havana line SRI)の葉の切片を、ナフタレン酢酸とベンジルアデニンを制限したMurashige-Skoog培地上で培養することにより、植物体へと再生させることに成功した。今後は、この条件を上記PVY外被タンパク質遺伝子でのタバコの形質転換系に応用することが可能であると考える。
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