研究概要 |
高等植物におけるオルガネラの形質転換の研究は分子育種への応用および分子細胞生物学の基礎の両面において興味ある課題である。高等植物オルガネラの形質転換の研究は世界的にみても緒についたばかりであるが、最近パ-ティクルガン法を用いたタバコ葉緑体の形質転換の成功例が報告され、本法がオルガネラ形質換研究に有力な方法であることが示された。他方、本法を用いた高等植物ミトコンドリアの形質転換例は未だ報告されていない。本研究はまず、パ-ティクルガン遺伝子導入装置を試作・開発し、さらに本装置を用いて高等植物ミトコンドリアの形質転換に敢えて挑戦したものである。結果的には未だ成功しなかったが、将来における本課題の研究の基礎を確立することが出来た。 1.窒素ボンベ圧およびエア-ライフルの発射機構を利用した圧縮空気圧を駆動力とするパ-ティクルガン装置を開発した。窒素ボンベ圧式装置の最大加速圧力は25kg/cm^2であるが、圧縮空気圧式装置では220kg/cm^2以上(プロジェクタイルの最大初速度は440m/s以上)であり、パワ-は10倍近く高い。また,圧縮空気圧式装置では径5cm以上の試料面に展開した培養細胞あるいは組織片の細胞に遺伝子導入することが可能である。 2.開発した空気圧式および窒素ガス式パ-ティクルガン装置を用いてイネ、コムギなどの単子葉およびタバコ、ダイズなどの双子葉植物の培養細胞および組織片において核の発現ベクタ-の遺伝子(GUSおよびLUS遺伝子)発現に成功した。 3.また、タバコ培養細胞の形質転換体(NPTII遺伝子)の育成に成功した。さらに、シロイヌナズナの根組織に同遺伝子を導入し、カナマイシン耐性の植物体を得ることが出来きた。すなわち、本研究において開発したガス、空気圧式パ-ティクルガンを用いたトランスジェニックス細胞、植物の育成が可能であることが示された。
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