酵母のDNA複製を調節する70kdの核蛋白(p70)に対するモノクロ-ナル抗体を用い、発現ベクタ-λgt11に作成した酵母gene libraryよりこの抗体と反応する融合蛋白を生産するクロ-ンを取得した。このクロ-ンに挿入されたDNAが酵母ゲノム由来であることを確認し、さらに遺伝子全体を含むクロ-ンを取得した。得られたDNA5.1kbのDNAが塩基配列の決定を行ない、この配列中に4.1kbのORFの存在を見いだした。核酸および蛋白のデ-タベ-スに対しホモロジ-検索を行ない、本遺伝子が新規なものであることを確認した。解析の結果、本遺伝子はN末端近傍約250bp内にp70と同一のエピト-プを持つ130kdの核蛋白をコ-ドするものであることを明らかにした。本遺伝子の発現は酵母の生育と強く関連しており、また本遺伝子を破壊した株は劣性致死の形質を示したことから、本遺伝子は酵母の生育に必須なものであることを見いだした。本遺伝子の破壊株内で遺伝子をGAL1プロモ-タ-の支配下に発現させて生育させたのち、グルコ-スを含む培地に移して遺伝子の発現を停止させると細胞は核が一つで大きな芽を持った形態に揃って生育を停止した。このことから本遺伝子は細胞周期のS期またはM期の調節に関わるものであることが明らかになった。そこでこの遺伝子の産物に対して調製した抗体を酵母の核抽出液を用いたin vitro DNA複製系に作用させたところ、dose dependentな活性の阻害が認められた。以上の結果により、本遺伝子は酵母のDNA複製に関わる新しい細胞周期調節遺伝子であることを明らかにできた。
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