酵母の細胞融合では、一方の酵母の細胞膜と他方の酵母の核とを別々の方法で蛍光染色して標識してから細胞融合操作を行ない、両方の標識を持つ細胞を検鏡下に選別することにより融合細胞が得られることを以下の実験により確認した。すなわち細胞融合の操作を施した細胞懸濁液を顕微鏡で観察しながら、光学系を落射蛍光装置に切り換えて、いろいろな状態の細胞が混在している中から両方の蛍光標識を持つ細胞(つまり一つの細胞の中に色調の異なる2種類の色が、一方は細胞全体に、一方は細胞の一部分である核に集中して存在するような細胞)を見付け、次に可視光に光学系を戻した上で個々の細胞をミクロマニピュレ-タ-で取り出した。この一連の操作は長時間と熟練を要する上に、顕微鏡下の一視野のサンプルの中から得られる融合細胞の数は数個に過ぎない。そのために再生培地上で正常な生育状態に再生した細胞の数は少ないので統計的な処理、すなわち融合率、再生率を計算すること、はできなかった。予め融合させる2種類の酵母にはマ-カ-としてそれぞれ片方のみが活性を持っている酵素を持つように選んであるが、今年度は再生した細胞を培養して酵素活性がともに発現しているか、あるいはその量比を測定する実験は先送りした。 それに対して本研究でセルソ-タ-を使用してこの選別を行なったが、融合操作を施した細胞の懸濁液をセルソ-タ-のキャピラリ-の中を通過させる間に、個々の細胞が持っている2種類の蛍光の強さを同時に測定し、それぞれを細胞1個分の強さだけ持っている細胞を選び画分に分取することができた。以上の操作で機械が実際に働く時間は数分間で足りた。操作を効率良く行なうために、いろいろの蛍光色素を組み合わせて発光の波長と変さを変える実験は次年度に行なうものと致したい。
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