研究概要 |
細菌の多環性芳香族炭化水素(PAHs)酸化能を遺伝子レベルで解明し、その遺伝子起源を考察することを目的に、フェナントレン二酸素添加酵素遺伝子(phnA.)のクロ-ニングとそのヌクレオチド配列の決定をした。 フェナントレン(Phn^+)とナフタレン(Nah^+)を資化するPseudomonas putida(OUS82株)を単離し、同定した。その全DNAのSalIの部分消化断片から、新規に作成した広宿主域コスミドベクタ-を用いて大腸菌HB101中で約25kb(キロベ-ス)断片をクロ-ン化した。その断片から、phnAを含むことが推測された共通な9.5kb断片をサブクロ-ニングした。次いで、欠失変異解析によって推測されたphnA遺伝子領域の塩基配列を決定し、2855bpの領域に1つのプロモ-タ-と、315bp(104アミノ酸)、1350bp(449アミノ酸)と585bp(194アミノ酸)から成る3つのオ-プンリ-ディグフレ-ムとそれぞれにShineーDalgarno配列を見いだした。その配列は、P.putida NCIB9816のナフタレン二酸素添加酵素遺伝子ndo A,B,Cの塩基配列と90%の相同性を示し、NAH7プラスミドのnahA遺伝子とも強くハイブリダイズした。 親株OUS82株からのNah^+欠失変異株はフェナントレン資化能を消失し、さらにサリチル酸資化能を消失させても、フェナントレン後期代謝基質である1ーヒドロキシー2ーナフトエ酸(1H2NA)の資化能は残存した。また、フェナントレン資化性を持たないP.putida PpG1064(NAH7)は、細胞懸濁液での接触実験で、フェナントレンの単環開裂最終産物である1H2NAを与え、OUS82株は非資化性アントラセンから2ーヒドロキシー3ーナフトエ酸を与えた。以上の結果は、PAHs酸化の初発段階に関与する二酸素添加酵素を含めて、単環が開裂し、生じた側鎖の切断によって生じたoーヒドロキシルーカルボキシ酸に至るまでの初期代謝には同一遺伝子起源の特異性の広い酵素系が関与し、後期代謝の有無が菌株のPAH資化性を決めていることを示唆している。
|