研究概要 |
本研究は研究代表者らが発見した新規トレハラ-ゼインヒビタ-(トレハロスタチン)の化学構造解析,阻害機構の解明等を行うとともに、新規インヒビタ-の開発を目的としたもので,本年度,以下のような成果を挙げた。 1.トレハロスタチンの構造決定 昨年度で明らかにした推定構造(グルコ-スと未知五炭糖より成る擬似二糖様構造)についてさらに検討を進めた。αーDーグルコピラノシル残基の存在を液体SIMS,H,HーCOSYスペクトル,分解産物のアセチル誘導体の ^1HーNMR,円二色性スペクトルより確定した。αーDーグルコピラノシル残基のアノメリック炭素の化学シフト値からNーグルコシド結合であることを明確にした。非グルコ-ス部分の構造は,H,CーCOSYスペクトル,HMQC,HMBCスペクトル等のデ-タより5員環骨格であることを明確にした。NEOSYスペクトル解析によって立体配置を調べた。その結果より,非グルコ-ス部分の構造がイソウレイド基を含有する擬似環状糖アルコ-ルであると結論した。最終的にトレハロスタチンの構造を,αーDーグルコピラノシル残基の1位が糖アルコ-ルのウレイド窒素原子と結合したものであることを明らかにした。この構造は全く新規なものであり,イソウレイドで架橋された擬似こ糖が発明されたものも初めてである。 2.動物トレハラ-ゼインヒビタ- 昨年度の探索で発見したインヒビタ-について検討を進めた。生産菌株YOー23株の培養条件検討により、約150倍に生産量を向上させることができた。その培養液より本インヒビタ-の分離精製法を確立した。その構造を明確にするに至らなかったが,本インヒビタ-が動物由来の酵素を強く阻害する新規なトレハラ-ゼインヒビタ-であることを明らかにすることができた。
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