Penicillium属菌の胞子形成誘導物質の単離・構造決定を目的として次の2つの異なる菌株について研究を行って以下に述べる結果を得た。(1)P.funiculosum菌の胞子形成誘導物質の単離・構造決定:NOY237菌をモルト・ブドウ糖培地で大量培養を行って、培養濾液の酢酸エチル可溶中塩基性画分を得、この画分をアセトニトリル-ヘキサンでの分配クロマトグラフィ-、続いて活性のあるアセトニトリル画分を分取薄層、高速液体および再度の分取薄層クロマトグラフィ-を行って、培養液731よりスポロジェン-PF1と命名した活性物質を4.9mg単離することに成功した。本物質は1μg/discのdoseで本来胞子を形成しない暗黒条件下生育菌糸上に有意な胞子形成活性を示し、高分解能MSより分子量が374で分子式C_<22>H_<30>O_5を有し、また、^1H、^<13>C-NMRなどから2個の環を有するポリケタイド化合物であることが示された。現在微量化学反応などを用いて構造を解析中である。 (2)P.chrysogenum菌の胞子形成誘導物質の精製:IFO6143菌はポテト・庶糖培地での液体培養で多量の胞子を形成するがモルト・ブドウ糖培地では全く胞子を形成しないことから、ポテト中に胞子形成物質が存在することが示唆されたので、この活性物質の精製・単離を行った。ポテトの煮沸水溶液を酢酸エチル、アセトン、メタノ-ルおよび水可溶画分に分離したところ胞子形成活性は水可溶画分にのみ認められたので、この水可溶画分をメタノ-ル水を溶出溶媒として活性炭カラムクロマトグラフィ-により精製を行ったところ水(100%)で溶出される画分にのみ胞子形成活性が認められた。現在この活性画分についてさらに精製を行っている。また、大変興味あることに胞子形成画分の添加は同時に強い抗菌物質の生産をも誘導することも分った。
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