研究概要 |
予備的な実験結果から、糸状菌を養分飢餓状態・高温や薬物添加・異種微生物の混入などのストレスを与えて長期間培養したときに、糸状菌がマイコアレキシンと呼ぶべき自己防御物質を生産して、環境に適応していることを認めていた。今年はまず典型的なマイコアレキシンを生産する菌株を選定して、その培養条件を検討するとともに、その有効成分の単離と構造研究を行なった。まず菌株としてはAspergillus niger,Alternaria属、Colletotrichum属を選定して、上記のストレス条件を与えることによって生産されるマイコアレキシンを我々の研究室で開発した生物検定法によって検索した。その結果Aspergillus nigerから新物質としてマイコアレキシン2種を単離し、分子式はいずれもC_<13>H_<14>O_6と決定したが、全構造を確定するには至っていない。Alternaria属からは5種の物質を単離し、いずれも新しいインド-ル系化合物であることを確認した。興味あることにこれらの物質は、同菌の分生胞子の発芽を低濃度で抑制するので,胞子の休眠発芽を抑制する極めて重要な生理活性物質であると考える。本研究の成果については、今年度1月にパキスタンのカラチで開催された第4回国際天然物化学会議で発表した。交付申請書に記述した揮発性の抗菌活性を示す物質の単離については、現在検討中である。
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