レトロ配向モデルに従って合成したretro-Dynorphin 13 methylesterは強いκレセプタ-選択性を持ったオピオイドアンタゴニストであり、Try-OCH_3をC末端に持ったオピオイドアンタゴニストがレトロモデルに適合する事例が拡大された。 牛乳κ-カゼインのペプシン分解物から単離したcasoxin 6(Tyr-Pro-Ser-Tyr-OCH_3)および、これをもとに合成したcasoxin 5(Arg-Tyr-Ser-Pro-Tyr-OCH_3)はμ-およびκ-レセプタ-に対し親和性をもつオピオイドアンタゴニストであるが、casoxin 4(Tyr-Pro-Ser-Tyr-OCH_3)はμ-レセプタ-に対し選択的なオピオイドアンタゴニストである。即ち、これらのオピオイドアンタゴニストではN末端側に存在する塩基性残基がκ-レセプタ-に対する選択性を支配しているが、これはオピオイドアゴニストペプチドにおいてC末端側に存在する塩基性残基がκ-レセプタ-に対する選択性にとって必須な事実と丁度逆の関係である。このことは、Tyr-OCH_3をC末端に持つこれらオピタイドアンタゴニストがオピタイドレセプタ-上でレトロに配向して結合するという我々のモデルの論拠の一つである。κ-カゼインのペプシン-トリプシン分解物から今回単離した新しいオピオイドアンタゴニストcasoxin A(Try-Pro-Ser--TurGly-Leu-Asn-Tyr)はC末端が遊離の場合でもかなり強いオピオイドアンタゴニスト活性を示し、μ-レセプタ-に対し選択的をリガンドであった。κ-カゼインのペプシン分解物から得られたSer-Arg-Casoxin Aもまたμ-レセプタ-に選択的なリガンドであり、casoxin 6のようなκ-レセプタ-選択性は示さなかった。このことは、レトロモデルはcasoxin AおよびSer-Arg-Casoxin Aには適用され得ず、またTyr-Gly-Leu-Asn-Tyr配列の意義はTyr-OCH_3とは異なることを意味している。
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