昨年度に引き続いて、旨味成分や苦味遮蔽効果を有する物質として注目されているグルタミン酸(Glu)やアスパラギン酸(Asp)等の酸性アミノ酸からなるジペプチドを、パパインを多孔性担体に固定化した酵素を用いて合成するためのバイオリアクタ-の開発を目的として、以下の項目に重点をおいて検討した。 (1)昨年度、固定化パパインを酵素エチル中で作用させるこにより、NーBenzyloxycarbonylーLーAspartic acid(ZーAsp)やZーGluを酸成分として、一方LーGlutamic acid diethylester(Glu(OEt)_2)やAsp(OEt)_2をアミン成分としてアスパラギン酸やグルタミン酸ダイマ-の前駆体を高収率で合成するための条件の最適化を行ったが、生成物の完全な構造決定はできなかった。本年度は、先ず生成物を単離・結晶化する方法を確立し、次いで生成物を核磁気共鳴、及び赤外吸収のピ-クから同定した。 (2)バイオリアクタ-で連続合成するためには、固定化酵素の安定性が重要な因子となるが、安定性に及ぼす諸因子を実験的に検討した。比較のために遊離酵素の安定性も調べた。有機溶媒中で固定化酵素を作用させた場合の担体内部のpHに相当するpH5.5の緩衝液中では、30℃で24時間後の残存活性は、70%であった。一方、酢酸エチル中では、残存活性は50%であり、かなり不安定であることが判明した。この理由について検討した結果、パパイン中のSH基が酸化されること、酢酸エチルが酵素蛋白に直接接触することによりタンパク質の変性が主な原因であることが示唆された。しかし、酵素の固定化時に牛血清アルブミンを添加すると安定性が顕著に増加することが判明した。
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