研究概要 |
(1)カヤモノリ科褐藻ワタモの雄性配偶子は遊泳性で着床刺激によって性誘引物質を分泌し、効率よく雄性配偶子を誘引して受精を行う。ここでは、その性誘引物質は雌性配偶子が配偶子〓から放出される前からすでに雌性配偶子内に貯えられているのか、あるいは放出後遊泳中に生合成されるのかを明らかにするために、山口県沿岸に生育するワタモやカヤモノリにおける性誘引物質およびその分泌量を分析精査した。 その結果、合成品を併用したGCーMS分析などにより、ワタモ、カヤモノリの性誘引物質は dictyopterene B(ホルモジレン)と同定された。他方、一定細胞数の雌性配偶子懸濁液中のホルモジレンを経時的に分析、定量し、雌性配偶子の配偶子〓から放出、遊泳、着措床など一連の過程を通して、ホルモジレンが増加することを見出した (2)ワタモ、カヤモノリおよびマツモの雌性配偶子から分泌されるホルモジレンは溶媒抽出、硝酸銀シリカゲルカラムおよびHPLC分取(ODS)を経て、キラル固定相を用いたHPLCによって分析した。その結果、ワタモおよびカヤモノリのそれは、92ー93%e.e.[(-)-(1R__ー,2R__ー)] であるのと対照的に、マツモにおいては66%e.e.であり、光学純度に顕著な差異が見出された。これらのことから、ホルモジレンの光学純度あるいは微量性関連化合物の混合比が異種間認識を行なう重要な因子ではないかと推定された。
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