Myrothecium verrucaria No.55株の代謝物から、抗腫瘍活性を示すシクロプロパン環を持った新規ピラマン型ジテルベノイドMyrocin B、Cを単離し、それらの構造決定を行った。今回、同一代謝物から55-Oと仮称している関連物質を単離、構造解析を行った。55-Oは融点210-212℃、無色針状結晶、El-MS m/z 326(M^+)、分子式C_<20>H_<22>O_4を示した。^<13>C-NMRスペクトルより、メチル炭素3個、メチレン炭素3個、4級炭素4個、オレフィン炭素8個およびカルボニル炭素2個の存在を確認した。プロトンスピンデカップリング実験により、3級メチル基3個、3級水酸基3個、末端ビニル基、共役カルボニル基、等価のメチレン基に隣接するシス配置の二重結合、ラクトン環またはエステル基の存在を確認した。さらに、^1H-^1H、^<13>C-^1Hおよび遠隔^1H-^1Hシフト相関2D-NMRスペクトルの解析により、4つの部分構造を明らかにした。以上の知見および生合成の考察から、本物質はMyrocin類抗生物質と同様な骨格を持った4環性ピマラン型ジテルベノイドであると考えた。さらに、Myrocin類のNMRスペクトルとの比較、遠隔^1H-^1H NOE相関2D-NMRスペクトルの結果と合わせて、55-0物質の構造を相対配置を含めて9-ヒドロキシ-7-オキソ-1、5、8、15-ピマラテトラエン-19、6-γ-ラククトンと推定した。55-Oは一部のかびに対して弱い抗菌活性を示したが、抗腫瘍活性は示さなかった。Myrocin類の活性はγ-ラクト-ル構造に由来すると推定できる。SH基に活性な物質のスクリ-ニングで未同定のかびから含塩素シキミ酸誘導体を単離した。エノ-ルピルビ-ル構造を持ったγ-ラクトンを分子内に持つことが確かめられたが、その閉環方向に2通り考えられ、現在、X線構造解析を行っている。
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