本年度は、標高1360mの緩斜面上のブナ林下に分布する火山灰を母材とする暗色系褐色森林土(dBo型土壌)と、標高2075mの痩せ尾根上のコメツガ林下に分布する蛇紋岩を母材とする乾性ポドゾル土(PoII型土壌)を調査し、それぞれの主要な層位から採取した未攪乱試料を用いて土壌薄片を作製して偏光顕微鏡下にて微細形態学的特徴について検討を加えた。dBo型土壌では、多量の火山ガラス、同ガラスに由来するアロフェンや活性Alなどの非晶質物、それらと固く結合した比較的腐植化が進んだ有機物、および鉱質粒子の間に存在する砕屑状の腐植化の進んでいない有機物の存在が特徴的であり、有機物の分解による可給態養分の供給に乏しいことが推定された。また、粒子間孔隙などの細孔隙に富むガマトリックスは緻密であることから、有効水や通気透水性にも乏しいことが想定された。PoII型土壌では、粗腐植な未分解の有機物の集積したFH層の下に発達する比較的粗粒質で主として有機酸により遊離酸化物の流亡した灰白色のA_2層と、その下位に一次鉱物の周囲を被膜状に覆ったり粘土鉱物と結合し一次鉱物の間にアグロメロプラズミック的に存在する遊離酸化物と暗色有機物の集積したB_1層が特徴的であった。これらA_2およびB_1層ともマトリックス内にジョイントが発達しており時期的に強度に乾燥することがあることを示していた。dBo型土壌は一般に良好な地形に分布し、土層が厚く、それ程強く乾燥することはないが、通気透水性が不良であり、養分的にも肥沃でないので、国土保全や水源涵養機能の高度の発揮を目的とした択伐林施業などを行っていくのが得策であり、PdII型土壌では、地形も悪く浸蝕を受け易く、強酸性で養分欠乏もあり、乾燥し易いなど、一旦森林を破壊したらその回復は極めて困難であると考えられるところから、保護林的な取扱いが必要であることなどが示唆された。
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