研究課題
本研究では活火山地域で降灰活動によって山腹斜面や河床堆積物の中に形成されるサンドイッチ状火山灰層が災害科学的にはどのような意味を持っているのかを火山性地震の観点から追究したものである。すなわちここでは震動・衝撃荷重に対する火山灰のせん断抵抗の応答特性および繰り返し運動による土塊の内部構造の脆弱破壊特性から火山泥流の発生予測を試みた。その結果以下のようなことが明かとなった。レオロジ-試験によるせん断抵抗特性から判断して、濃度がほぼ15%以上の火山灰と水から成る混合流体は、火山泥流と定義することができる。濃度が48.5%以上の火山灰のみの単一材料から構成される混合流体に比較的低周波の振動(揺れ運動)が加わった場合、ダイラタンシ-効果が顕著に現れ、振動数の増加とともにせん断抵抗も急激に増加する。そして濃度66%程度ではほとんど塑性化し、流動性が著しく低下する。しかしこれに異粒径の礫が混入し、粒径の不均等化が起こると、ダイラタンシ-効果が阻害され、流動性は逆に増加する。そしてこの流動性は混入率40%付近で最も高くなる。また火山灰堆積物は濃度が66%以下になると、振動数約5cycle/sec、振幅1cm〜2cmの比較的緩やかな振動(搖れ)を僅か数秒間受けだけでも、完全な流体化が起こる。さらに火山灰堆積物が火山性地震などの比較的高周波の震動を受けると、その流動発生限界勾配は、震動が加わらない普通の状態(自然状態)よりも20°〜30°も減少する。また火山灰の見かけの内部摩擦角はあるところまでは濃度が高くなるほど小さくなる。このことは特に降灰層が堆積物内にサンドイッチ状に介在するような活火山地域では、震動・衝撃荷重の作用時にはかなり少ない降雨量でも降灰層の脆弱破壊が起こり、その結果山泥流の時発生する危険性が充分ありうることを意味している。
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