森林で被覆された流域においては、山くずれはその跡地での土層生成を通して周期的に繰り返し発生してる。この性質を考慮すると、誘因としての降雨条件が同じでも、それに対する流域のレスポンスすなわち山くずれ発生率は同じにはならず、過去の山くずれの発生覆歴によって異なる。本研究は、風化速度が大きく山くずれの周期が短い風化花崗岩地帯や火山砕屑物地帯を対象にした、山くずれの周期性を考慮した流域生産土砂量の予測手法を開発することを目的としている。 本年度は紫尾山と市房山(以上風化花崗岩地帯)、鹿児島市、垂水市(しらす地帯)の4か所において調査地を設定、山くずれ周期の推定、表層土の賦存量の把握、降雨と山くずれの関係解析の諸作業を実施した。得られた結果は以下の通りである。 1.各調査地における山くずれの推定周期は、しらす急斜面(傾斜45度以上)で10^1〜10^2年、しらす急斜面(45度以下35度以上)で10^2〜10^3年、風化花崗岩(強風化)で10^2年、風化花崗岩(中〜弱風化)で10^2〜10^3年である。 2.斜面における崩壊物質としての表層土の賦存量は山くずれの履歴と密接に関係する。流域における崩壊ポテンシャルは表層土の賦存量によって表すことができる。 3.周期が短いしらす急斜面(45度以上)の表層土の賦存量は植生によって概略推定できる。 4.山くずれを誘発する降雨の回帰年は、山くずれの周期が短いほど小さくなる。降雨の推定回帰年は、しらす急斜面(45度以上)で数年、しらす急斜面(45度以下)で20〜30年、風化花崗岩(強風化)で10〜20年、風化花崗岩(中〜弱風化)で20〜30年である。
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