本研究は、風化花崗岩地域や火山地域を対象にして、山崩れの周期性を考慮した生産土砂量の予測手法を開発することを目的として実施したものである。当初予定した鹿児島県紫尾山、屋久島、宮崎県一房山(似上花崗岩)およびしらす地域(火山)に、阿蘇根子岳(火山)などこの間災害に見舞われた所を加えた7箇所を調査対象地として、山崩れの履歴、表層土厚の分布および降雨条件に関する調査と解析を実施した。 1.空中写真判読と現地踏査によって作成した山崩れの履歴図によると、斜面には0次谷を中心に年代の異なる多数の山崩れ跡地が形成されている。その大部分は基本的にはそれぞれ違った斜面部位で形成されているが、火山地域では過去約100年以内の短い期間に同じ斜面部位に新旧の跡地が重複して分布している。 2.斜面の表層土厚は山崩れ跡地形成後時間とともに成長する。しかし表層土厚には安定の限界厚が認められ、表層土がその厚さを大幅に越えて斜面に存在することは不可能である。この限界厚は地質や地形によって異なる。なお表層土が安定の限界厚に達するまでの期間が分かれば、山崩れの周期の最小値が推定できる。またしらす地域では表層土厚は植生による概略の推定が可能である。 3.山崩れの発生頻度はその誘因としての降雨によって一律に決まらず、山崩れの履歴に影響される。 4.流域における山崩れ発生のポテンシャルは表層土厚の確率密度関数によって表される。この関数は時間によって変動し、多数の山崩れが発生すると限界厚以上の表層土の分布量が減少し、山崩れのポテンシャルは小さくなる。逆に山崩れが長期間発生しないと限界厚以上の表層土の分布量が増加し、山崩れ発生のポテンシャルは大きくなる。
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