研究概要 |
商業用広葉樹チップとして世界的規模で使用されているアカシヤ,ユ-カリおよびオルダ-の各チップ,更に短伐期早生広葉樹として注目されている北海ポプラ,キヌヤナギとナカバヤナギの各チップを木材分析とリグニンの骨格構造の分析により特徴づけた。次に各チップは昨年度の研究で開発された硫酸を触媒とした酢酸水による木質バイオマスの簡易成分分離法により、セルロ-ス(パルプ)、ヘミセルロ-スおよびリグニンに分別した。商業用チップではアカシヤの成分分離が若干難しかったが、チップの大きさを実験室サイズにそろえることで比較的良好な分離が可能であった。北海ポプラは極めて容易に分離出来たが、ヤナギ類は困難であった。しかし、0.5%程度の陰イオン界面活性剤を添加することで容易に成分分離された。 分離したセルロ-ス(パルプ)を製紙特性を検討し、相応する材のクラフトパルプの特性と比較した。裂断長と破裂強さは両パルプに大差なかったが、引裂強さはクラフトパルプの70%であった。しかし、この分離法で得られたパルプはいずれの材のものでも化学パルプとしての特性を有した。容出した水溶性成分であるヘミセルロ-ス由来の低分子量糖類はほゞ理論収率で水溶液中に回収されることが、還元糖分析の結果により示された。溶出した分離液から水不溶部として20%(対チップ)程度のリグニンが回収された。リグニンの構造分析の結果は単離されたリグニンが若干の縮合が起こっているが、反応活性なベンジルアルコ-ル基も存在する変質度の少ないリグニンであった。 リグニンをフェノ-ルとホルムアルデヒドで縮合した樹脂は一類合板接着剤として利用でき、これに少量のレゾルシノ-ルを加えると中温硬化型リグニン接着剤として有効であった。
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