日本産針葉樹、7科17属23種の針葉について、そのエストライド量、それぞれのエストライドを構成するω-オキシ酸の種類及び量を求めて比較、考察した。更に、一部の試料についてエストライドの季節的変動についても調べた。 針葉は磨砕後、ソックスレ-抽出器によってメタノ-ル抽出を行ない、脂肪粉末試料を準備した。 最初に、全試料についてクラ-ソン法とアセチルブロマイド法によるリグニンの定量を行ない、両者の差をエストライド概量として求めた。その結果、イチイを除く他ではエストライド量は10〜20%であった。なかにはイヌマキやメタセコイヤのように30%を越えるものもあった。 次に、試料をステンレス製耐圧管中で2N-水酸化ナトリウムと共に、170℃、2時間処理後、分解生成物を分別して酸フラクションを得た。同フラクションを常法によりメチル化及びTMS化してガスクロマトグラフィ-に付して定性並びに定量分析した。その結果、エストライドを構成している酸はサビニン酸(1)、ジュニペリン酸(2)、10、16-ジヒドロキシヘキサデカン酸(3)、7-ヒドロキシヘキサデカン-1、16-ジカルボン酸(4)及びパルミチン酸(5)であることが判明した。量的には、ゴヨウマツを除く他の22種では(3)が主要な酸であった。イチイとソテツでは(4)が(3)と同程度量含まれていた。イヌマキ、コウヤマキ、カヤ、ソテツでは(3)を100量とした時の20〜40量の(2)を、エゾマツでは20量の(1)を含有していた。他はいずれの酸も10量以下と微量であった。尚、ゴヨウマツは(1)と(4)をほぼ同量ずつ含有していた。 又、一部の試料についてみ試料採取時期を変えて調べたところ、イヌマキやカヤのように季節によって構成ω-オキシ酸量に差の認められる種であることも判明した。
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