研究概要 |
昨年、23種の日本産針葉樹類の針葉について、エストライド量とそれを構成するオメガオキシ酸類の種類を調べた。エストライド量はリグニン定量法であるクラ-ソン法による値からアセチルブロマイド法による値を差し引くことで求め、対乾燥葉当り、10〜20%の結果を得た。 今年度は、上記23種に加え、新らたに19種を追加した42試料について、脱脂後,アルカリ分解し、分解物をGLCによる定量を行なってエストライド量を間接的に求めた。また、スギとコウヤマキについて、エストライドおよび構成酸量の個体別並びに年葉別差異を調べた。次に、より効率的にエストライドを取得するために、スギとゴヨウマツについて、強弱5条件による爆砕処理と、セルラ-ゼ、ペクチナ-ゼ2酵素による処理を行ない、エストライド収量の向上をめざした。 42試料のエストライド量は、間接的な測定値ではあるが、2〜10%となり、上記の値や文献値に比べてかなり低かった。これについては試料中におけるエストライドの複雑な存在形態が原因していると考察している。個体別差異については、試料により、エストライド量に若干の多少が認められた。また、構成酸量にも多少が認められたが、これも構成酸間で量的関係が逆転することはなかった。これらと同様の結果は年葉別比較においても得られた。 弱い条件での爆砕処理は約4倍のエストライド収量を増加させた。中程度の条件では収量の低下がみられたが、強い条件では再び収量増加が認められた。この原因についても、先と同様、エストライドの存在形態の複雑さによるものと考察している。セルラ-ゼとペクチナ-ゼ酵素による同時処理も約4.7倍のエストライド収量の増加がみられた。なお、爆砕処理と2酵素処理の併用についても検討したが、それぞれ単独で処理した場合を著しく上回わることはなかった。
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