研究概要 |
植物資源の高度利用の一つとして、我国で利用法の確立されていない針葉樹の葉に注目した。葉はセルロ-スのような炭水化物類とリグニンのようなポリフェノ-ル類と共に、クチンと呼ぶ成分を多量に含んでいる。クチンはωーヒドロキシ脂肪酸を中心とする酸類と脂肪族アルコ-ル類のなすオリゴエステル、エストライドであるとされている。本成分の直接及び関接的な利用法確立に資する研究を行った。 23種の針葉について、全エストライド量を求めた。方法は、脱脂葉粉をリグニン定量法であるKlason法とAcetyl bromide法に付し、両測定値の差を目的成分量とすることによった。値は10〜20%の範囲にあった。 次に、42種の試料について、アルカリ分解を行ない、エストライドを構成している酸とアルコ-ルの全量を求めた。前者は1〜6%、後者は前者のtrace〜14%であった。また、各エストライドを構成している酸とアルコ-ル類、夫々の同定と定量も行った。12ーhydroxylauric acid、10、16ーdihydroxyhe xadecanoicacid、hexadecaneー1,16ーclioic acid等9種の酸を確認した。これらの存在様相は種に特異的であった。同様に、アルコ-ルでは、1,16ーhexadecanedic 1、1,14ーtetradecanediol、1,12ーdodecanediol等6種が認められ、酸と似た分布傾向にあった。 上述のエストライド量と分解物量から逆算した量の間に大きな差があったので、オリゴマ-や分解物をより効率的に得るため、前処理法を種々検討した。爆砕、塩素、酵素処理が効果的であった。他に、スギ葉を用い、全オリゴマ-量とモノマ-類の質及び量的差異について、年葉並びに季節別に調べ、際立った差異のないことも確かめた。 以上より、目的とするエストライドやモノマ-類を効率良く得るには、どの樹の葉をどのように処理すれば良いかを確立する等、エストライド利用に向け、基礎的情報を提供できた。
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